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JIS盤用VCBの保守と更新 (第8回目:屋外用キュービクルの事故と対策)

第8回目の配信「屋外用キュービクルの事故と対策」です。

以下の図にまとめますように、当時有力と思われた説明資料が異なる団体様より、有料で発行されていたため、1990年代当時は具体的な対策を説明するための適当な配布資料がないという状況にありました。
しかし、絶縁劣化事故は方々で頻発して起きていましたので、対策は急がねばなりませんでした。
早急に正しい対処方法を広くご説明しないと、混乱が更に増加するということが叫ばれ、JEMAとJSIAの双方が、委員を出し合って、緊急に対策を打たなければ間に合わないという状況でした。

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当時発生していた典型的な絶縁劣化事故の事例を以下に示します。

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上図にありますように、ビルの屋上に設置されるJISキュービクル盤は、俗にいう「ゲタ基礎」という工法で、設置されたもので、2本のコンクリート直方体の上に据え付けて運用されるのが一般的でした。
ところが、台風等の際、雨風が2本の直方体の中に吹き込んできますと、ZJIS盤の床板に設けられている換気口を通って汚水がキュービクル箱体内に吹き込んで機器を絶縁劣化させ、短絡事故に至るというものでした。
絶縁劣化の原因が、床の換気口から吹き上がった汚水の侵入と確認された方で、咄嗟の応急対策として床の換気口を全面的に塞いでしまうなどの極端な例もあり、その結果、天井部の換気口から、外部の水分が、盤内に侵入して断路器やVCBに降りかかってしまい、別の意味での絶縁劣化事故を引き起こすことになり、逆効果となるような例も起き始めましたので、正しい対策手段を一刻も早く啓蒙することが急務でした。

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当時、則武は、JEMAの「汎用高圧機器業務専門委員会」の委員でしたが、同時に盤設計のオブザーバとしての立場で、JSIAでの規格委員も拝命していました。

則武が、VCBメーカの説明員として、全国各地で、講演活動をしていた際に、電気管理技術者の皆様からの、ご意見としては、「JEMAもJSIAもこんないい資料を持っているのに無料で配らないのは、宝の持ち腐れだ!」というもので、結局世の中は必要なお金を誰が負担するかが一番の問題なのかなと思っていたものでした。
役にたつ資料が紙に印刷されてでき上っている以上、必ず費用は発生して、誰かが負担しなければいけない訳です。
こう考えますと、今の時代は、メールマガジンという費用を極限まで減らせる手段が取れるのはいい時代になったのだなと感じます。

JEMAとJSIAの双方の委員が相談して出した答えは、両方の工業会が有する有効な資料のエッセンスを一つの無償提供可能な資料にまとめあげれば、すぐに作成可能で、且つ有効な資料になるということでした。
必然的に、典型的な事故例の紹介と、キーとなる絶縁劣化の基本を調査/検証した結果を組み合わせた資料の合成が検討されました。
こうして完成したのが、「キュービクル式高圧受電設備を安全にお使いいただくために」の無料配布資料です。
この資料は、JEMA と JSIA双方の工業会の名前が記されている珍しいパンフレットとなり、無償配布され更にJEMAのHPで、一般公開されましたので、説明会でも自由に引用することが可能となり、則武もJEMAの派遣説明者として、国内各地で、対策を説明して回る機会を得ていた訳です。

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「キュービクル式高圧受電設備を安全にお使いいただくために」のパンフレットの表紙の漫画を見ていただくと、ビルの屋上に設置されたキュービクルが、雨風による絶縁劣化で悲鳴をあげており、レスキューに来た人の手には、ゲタ基礎の両端を塞ぐための板と清掃するための道具があり、こうした状況での正しい対処法を示しています。

則武は、この頃、日本電機工業会と日本配電盤工業会(現在の配電制御システム工業会の前身)の両方の委員を同時に拝命していた関係で、この立場の異なる2つの工業会の間の調整にかなり苦労したのを思いだしますが、間違いなくこの両方の工業会が連携して連名の配布資料ができたことにより、機器メーカーとJIS盤メーカーの間の絶縁劣化に対する共通認識がまとまったことに大きな意義があったと感じています。

以下に、JEMAから無料で、ダウンロード可能な、パンフレットの入手方法を紹介します。「キュービクル式高圧受電設備を安全にお使いいただくために」は、現在では、5222「屋外キュービクル式高圧受電設備を安全にお使いいただくために」に改名されており、他にも有用な資料が入手可能です。
5213「汎用高圧機器の更新のおすすめ」も、更新推奨時期を明記した便利な資料です。

兎も角、不幸にして波及事故が発生した場合に、その主遮断器が更新推奨時期を過ぎていれば、電力会社は責任をオーナーに向けてきますが、もし管理技術者が更新推奨時期のことをオーナーに告げていなかったとなると、今度は、管理技術者が強く責められることになりますので、説明の際にこうした資料は強い説得力を持つ訳です。

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