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JIS盤用VCBの保守と更新 (第9回目:その他の事故事例)

第9回目の配信「その他の事故事例」です。

ゲタ基礎による絶縁劣化の事例以外にも、JISキュービクル盤の下にあるチャンネルベースの間に雨水が溜まって、池の様になっているもので、溜まった水が蒸発し、盤の中に蒸気となって侵入して、絶縁劣化を引き起こす事例があります。
池の上にキュービクルが設置されている状態になってしまっているのであれば、湿度が多くてすぐに絶縁劣化してしまいます。

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一般的に、JISキュービクルは、側面に換気穴を有するチャンネルベース上に設置され、外気はこの換気穴と、キュービクル下面に空けられた換気穴より、キュービクル内に吸い込まれます。
このチャンネルベースですが、コンクリートベース上に設置されますと、外部からの水の侵入を防ぐため、コーキングで密封する場合がありますが、このコーキングが逆に、チャンネルベース内に溜まった水を外部に逃がさない役目もはたしてしまうため、その水が蒸発して、盤内に侵入して、絶縁劣化を起こしてしまった実例です。
対策としては、コーキングするならば、必ずベースに排水口を設け、中に溜まった水を速やかに、外部に排出する構成にする必要があります。

また、下図に示しますように、昔からあることですが、天井部の換気口から、雨風が箱体内に侵入する例もあります。
しかし、こうした事例に対しては、経験のある盤メーカ―様は、雨返しの板を設置されていますので、新しい盤で、実際に問題が発生することは、ほぼありません。
但し、年式の旧い配電盤を担当される場合には注意して換気口の構造を確認をしておく必要があります。

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今回実物のVCBを後ろ向きで、展示しているのには、理由があります。
皆さま方が担当するJIS盤の中で、VCBを観察する場合に、正面から見ただけでは、その絶縁状況を観察することは不可能であり、十分に注意した上で、背面からVCBの絶縁物の表面を観察してやることがどうしても必要になってきます。
定期点検で、停電が取れる時は、徹底して観察し、一見キレイに見えるようでも必ずアルコール系のクリーナーで清掃して下さい。
一番絶縁劣化が発生しやすいのは、VCBの絶縁物の上面で、主回路端子部の周辺です。どのVCBメーカー様も、容易に主回路端子間や、対接地金属間で絶縁劣化が起きないように、ヒダなどを設けて、沿面距離を伸ばし、不具合発生を防いでいますが、それでも、下図のように、トラッキング(汚水による閃絡と部分放電の繰り返しにより、絶縁物が炭化する現象)が発生しますと、これが次第に長く伸びていき、最後には、地絡事故や相間短絡事故に至ってしまいます。
そうなる前に、このトラッキングなどの異常を発見してやることが重要です。
明確なトラッキングが見つかる程に進行している場合は、すみやかにVCBを更新するしかありません。

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ちなみに、この写真を御覧になった管理技術者の方から、「導体の貫通部はずいぶんスカスカだが、これはどこのメーカの絶縁劣化状態だい?」というご質問がでたことがあります。

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ご参考に今回展示している3社の貫通部を御覧にいれますが、3社ともスキマは結構あいています。
これは、スキマをなくしますとコロナ放電が発生するためで、これを避けるためです。
勿論、全部ブッシングにできればいいのですが、外形寸法と価格は途方もないものになりますから、どのメーカも現実的にできません。従って、電線を伝って流れ落ちてくる汚水は、どうしてもVCB本体の中に入ってしまうことになります。

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