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JIS盤用VCBの保守と更新 (第10回目:結露対策)

第10回目の配信「結露対策」です。(大型連休前の関係で、毎週水曜日発行でしたが、前倒しで、本日の発信となります。第11回目は5月5日予定)

下図に示すのは、実際にVCBに使われている絶縁物から切出した試験材料(10x10x70mm)を、湿度が変化させられる環境下において、その絶縁抵抗がどのようにに変化するかを実験検証したものです。

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相対湿度が、70%くらいでは、1000MΩあったものが、湿度が80%を超えると急激に低下し、1MΩ以下の非常に危険な状態になっています。
実は、この試料は、汚損度が0.03mg/cm2という汚れが多く付着した状態(規格では、7回目の配信にあるように、0.01mg/cm2 未満ですから、規格の3倍以上汚れているものであり、このデータから、絶縁劣化は、水分と汚れの複合作用によって、発生することが判ります。
言い換えれば、この2つの要素のどちらか一方を、完全に取り除いてやれば、絶縁劣化は防げるということになります。
水分の侵入がどうにも防げない場合は、ひたすら絶縁物の表面を、KV-NC01などのクリーナーで、清掃するしかないという訳です。

盤の中に発生する水分で、結構目に付きやすいものに結露があります。
梅雨時など、キュービクルのドアを開けるとドアの一面にビッシリと結露があったりしますと、ゾッとします。
しかし、この結露をあまりに注意しすぎて、間違った対策を取ると、却ってキュ-ビクルの寿命を縮めてしまうことになりますので、注意が肝心です。

注意するべき結露は、キュービクルの天井面で発生する結露です。天井面で発生した結露は、傾斜した屋根に沿って低い方の側の壁面に伝わって、そのまま下に落ちてくれればいいのですが、大抵の場合天井面には、強度を保つために、Lアングル等で補強されていることが多いはずです。
天井面で発生した結露水が、このLアングルでせき止められますと、両端を伝って、一か所に集まり、一番低いところから、一点集中で、下にまとまって落下することになります。
落下したところが、比較的水分に強い油TRの上であればまだいいのですが、VCB等水に弱い重要機器の真上だったりしますと、すぐに絶縁劣化事故ということになります。

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こうした場合の対策としては、危険な機器の真上をカバーするぐらいしかありません。
無理に結露をなくそうとして、天井部に換気扇を追加で設ける方が居られますが、これは、外部の湿度や汚れを盤内に強制的に吸い込む可能性がありますので、却って危険な場合があります。

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上図は、盤の形態が、密閉形であるか、屋外形であるか、自然換気形であるか、強制換気形であるかに分けて、運転期間中の汚れの変化を調査したものですが、強制換気形が最も汚れが大きくなっています。
ファンの力で、外気を吸い込むのですから、当然ですが、ファンを追加することは外気と共に、汚れも吸い込みますので、汚れ易くなることを意味します。

密閉形が最も汚れにくいのは当然ですが、意外にも、汚れの大きそうな屋外盤がそれほど汚れないのは、雨が降りますと汚れが流されてしまうからです。
電車設備で見る金網でできた配電盤に屋根がないのは、屋外機器に付着した汚れが雨によって洗い流されることを期待しているためです。

則武が、日本電機工業会が派遣するメンバーとして、全国各地で、講演活動をしていた際に、電気管理技術者の皆様と話していて、この説明後に頂いた意見は、「換気扇が装備されている受電盤を担当する時は、効果的な排熱を考慮したすばらしい盤だと思い込んでいたが、実際は、清掃に手間取る面倒な盤だった訳で、委託費を上げて貰うべきだったのか・・・」
という驚きのものでした。当時は、則武が所属していたメーカーでも換気扇は製造販売していましたので、「換気扇は、注意して正しく使えば有効な製品です」と必死になって弁解したのを思いだします。
20年以上前の、まだ若かった?頃の話です。

第8回、第9回、第10回の内容を動画にまとめた「絶縁劣化対策の真相 VOL.3」が以下にて公開されましたので、御覧ください。
https://youtu.be/QJ2Yxykkhto

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