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JIS盤用VCBの保守と更新 (第11回目:換気扇の追加は慎重に!)

前回、換気扇を設置した強制換気形のキュービクルは、外部から汚損物質を吸い込む可能性が高いので注意が必要というお話をしました。
勿論、最初からファンを必要とする盤設計となっている場合は、心配は少ないのですが、特に注意しなければいけないのは、当初は自然換気による冷却を前提として設計/製作されているJISキュービクル盤に対して、単に結露防止の意味だけや、盤内温度の低下だけを狙って、よくなるはずだという気持ちから、換気扇を追加して、結果的には絶縁劣化を助長してしまう例がありますが、これは絶対に避けるべきです。
換気扇による圧力で、内部で高温になった空気を盤外に追い出すまではいいのですが、追い出した空気の代わりに盤外から内部に勢いよく流入する空気の質(汚損)や量や、流入口の面積などを十分考慮しないで、安易に設置すると、問題を起こす例が多いからです。
換気扇自体は、電動機によって動いている訳ですから、その電動機も軸に使われているベアリングには必ず寿命がくるという問題があり、常時回転させるという訳にはいかないので、結局は自然換気との併用になることもよく考えておく必要があります。

一般的な自然換気によるJIS盤

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一般的なJIS盤での冷却は、自然換気のみで使われるようにできています。
JIS盤内部で発生する熱量(主として、変圧器によるもの)を外部に排出させるため、上部の換気口から、温まった空気を盤外に排出し、代わりに下部の換気口から、冷たい空気を盤内に吸気するわけですが、この吸気された空気の温度と、排出された空気の温度差に、移動した空気の量と、吸気口と排気口の高さの要素を加えて、掛けたものが、内部で発生する熱量と合致すれば、盤内の空気温度は、平衡になって安定する訳です。
換気口が大きくなれば、移動する空気の量が増加しますので、盤内の温度上昇は抑えられ、排出される空気の温度も下がる訳です。
換気扇を追加すれば、自動的に排気口の面積が増しますので、自然換気による冷却は、ファンが止まっていても当初より大きくなります。

しかし、ファンを使用した強制換気となると、ファンで生じる負圧によって、盤に設けられている換気口は、基本的に、全て吸気口になってしまうので、天井付近での空気の流れが、一変することを理解する必要があります。
下部の換気口は、元々が吸気口ですから変わりませんが、上部にある換気口は、元々、排気口であったものが、逆に吸気口に変化してしまいますので、注意が必要です。
しかも、JIS盤の上部に設けられていますので、空気と一緒に吸い込まれた汚損物質等は、盤の中に入ると、自然に下方向に落下していき、結果的に重要な機器にふりかかってしまうという性格がありますので、厄介なのです。
こうした場合、外部からの汚損に弱い高圧機器の周辺の換気口は小さくして、極力外気が上部の換気口から吸い込まれないようにするなど、高圧機器を守る工夫が必要です。
また、あとから追加工事ですと、足場の取りにくい場所での工事となりますので、スキマなどがでやすく、小動物の侵入の恐れが増しますので、この点でも注意が必要です。

特に下図に示しますように、より、能力を高めるためと考えて、換気扇を複数台取り付ける場合には、更に弊害が大きくなる可能性があるので、特に注意が必要です。

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特に注意いただきたいのは、上図にありますように、複数の換気扇を設置して、各々を独立したセンサーで、個別に稼働させる場合です。
センサーが高温を検出した場合に、ファンを動作させるのが一般的ですが、そうすると、必ず発熱体の真上にある換気扇のみが先に稼働することになります。
あまり熱を発生しない高圧機器の真上にある換気扇は、なかなか温度が上がらないので、殆ど動作しないことになります。こうした場合の気流の流れですが、発熱体の真上の換気扇により、外部に排出された空気の代わりの空気が必ずキュービクル盤の中に入ってきますが、その場合、近くにあって、最も面積の大きい吸気口はどれかというと、まだ稼働していない高圧機器の真上の換気扇ということになります。
従って、高圧機器の真上に配置された換気扇から、大量の外気が強制的に吸い込まれることになるのですが、その時、外気が湿度100%の霧だったりしますと、結果的に、水分に弱い高圧機器の真上から、霧が強制的に降ってくることになりますので、絶縁劣化の条件が揃ってしまうことになります。
対策としては、もし換気扇が複数ある場合は、センサーは一つにして、全部の換気扇を同時に動作させることが必要です。
また、絶縁劣化に弱い高圧機器の周辺の換気口は必要最低限の面積に小さくするなどの工夫が必要となります。

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