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JIS盤用VCBの保守と更新 (第16回:VCBを下から見た比較 富士と東芝)

お待たせしました。今回のハイライトであります、「VCBを下から覗いて見れば、メーカーにより、どのような違いがあるのか」ということのご説明です。

正直いいまして、各社のVCBを正面、側面、上面、背面から見てみましても、それほど大きな違いは見つかりません。正面から見た時の、デザインが多少違うかなというぐらいでして、根本的に異なることはないと考えてしまいますが、それでは、下方向から見ても変わらないものなのでしょうか?

今回は、東芝と富士のVCBを正面から展示していますが、VCBの下方に下面が見えるように鏡を設置していますので、展示台の前幕を外して具体的にどう異なるのか実際に比較して見ましょう。

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ここでは、代表例として、東芝と富士のVCBを御覧にいれますが、明らかに異なるのは、床面を開放しているか閉鎖しているかの違いです。御覧のように、東芝は開放されて真空バルブが直視できますが、富士はカバーされているので、見ることができません。富士東芝以外はどうかというと、日立は、東芝と同様であり、三菱は、富士と同様となります。日本国内で、4社しかないJIS盤用VCBメーカの構造の違いが、はっきり床面の板の有無に表れていますが、どのメーカ様も、不思議なことに、この違いについては、特にPRや解説等で、自社の優位性を強調するPRはされておりません。熾烈な技術競争を40年以上を繰り返して、生き残ってきた4社が何故これほどの違いがあることに口をつぐんでいるのか不思議に思われるでしょう。結論を申し上げますと、各々にメリットとデメリットの両方があるので、下手に解説して、却って弱点を追及されたくないというのが本音のようです。

床板の有無についてのメリットとデメリットのまとめ
メリット デメリット
開放形
東芝 日立
バルブの清掃    ◯
上からくる汚損水  ◯
下からくる汚損     △
ブロワーでの直接清掃  △
(清掃後の乾燥のみはOK)
閉鎖形 下からくる汚損   ◯ 上からくる汚損水    △
富士 三菱 ブロワーでの清掃  ◯ バルブの清掃      

注意事項:盤内機器の上表面に堆積した埃等を、ブロワーにより、吹き飛ばし一見キレイになったように見せるような清掃は基本的にお勧めしません。この場合、空中に舞い上がった埃が再度機器本体の全面から付着することになりますので、正しい清掃とはいえません。VCBをJIS盤の外まで持ち出して、屋外で清掃するのであれば問題ありませんが、引出形でもない限り、かなりの手間が必要です。JIS盤内に据え付けたままでのブロワー清掃では、特に、下面を開放しているタイプのVCBには、汚損物質が下方から付着する可能性が増し、よくない影響を与えます。正しくは、クリーナーによる拭き掃除を完全に実施してのち、表面を乾燥するためにのみ、ブロワーを使うことは有効と考えます。

電源側(右側)のみ絶縁劣化した事例

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各々の方式に、メリットとデメリットの両方があるため、どのVCBメーカ様もこの違いについて公に論争することはないようですが、使用する側としては、実際に運用されるVCBが、どちらの構成に属し、どのタイプの絶縁劣化に対して有利なのか不利なのかをしっかり認識しておく必要があると考えます。特に既設VCBが絶縁劣化したことが原因による更新エ事となる場合は、その絶縁劣化の原因を十分把握してその対策に有効なVCBを更新用として選定することが必要と考えます。
仮に絶縁劣化したVCBの各相の絶縁抵抗が低下していく過程が時系列で、記録されていれば、その劣化の原因が、上方から来たものか下方から来たものかの判断は可能です。以下にその理由を上記写真を参考にご説明します。
VCBを背面側から見ますと、その接続されている電線の一方は、真っ直ぐ配線されており、他方は大きく曲げられているのが一般的です。大抵は、電源側は真っ直ぐ断路器に接続され、もう一方は、大きく曲げられてCTに接続されている場合が多いようです。勿論その逆の場合もあります。結露が、上方のDSなどで発生し、汚損水が電線を伝ってVCBに流れ込む場合、電線が真っ直ぐですと、途中で邪魔されることがなくそのままVCBに入ってきますので、電源側の主回路端子部の絶縁抵抗のみが大きく低下します。電線が大きく曲げられている場合は、CT等で結露が発生して汚損水が電線に流れ込んでも、電線の曲げられた部分で、下方に落下してしまいますので、VCBの主回路端子まで到達するのは困難なので、絶縁抵抗は低下しにくいので、大きな差がでます。従って、もし電源側と負荷側の差が大きく、電線の形状で真っ直ぐな方の低下が、大きければ、上方からきた汚水が原因となる絶縁劣化と判断できますので、更新するVCBは、東芝、日立のVCBを選択するのが有効と考えます。
もし、電源側と負荷側での絶縁抵抗の低下度合いに差がないようであれば、これは、下方から来た汚損によるものと判断し、床板のある富士、三菱のVCBを選択するのが有効と考えます。

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