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JIS盤用VCBの保守と更新 (第37回:R1 東芝V-10から東芝V4C-Uへの更新 パネル厚3.2mmの場合)

日本国内で一番最初に、JIS盤用のVCBの元祖として発売された東芝V-10からのスタートとなります。更新するのは、同じ東芝のV4C-Uとなります。

最初にお断りしておきますが、この講座の中で説明する更新手法は、従来から一般的に説明されてきた、主回路端子の位置のみから、更新するVCBの固定位置を一方的に決め、電線交換不要を最優先に左右位置を決め、更に更新VCBの床位置をむやみに上方に移動してしまう手法とは異なり、既設VCBが置かれている盤内での周囲状況を十分に確認する中で、最も合理的に配置される更新VCBの位置を割り出すという内容となっていますので、KVアダプターを使ったパネルの固定穴/角穴の加工位置も、状況に合わせて幅を持たせております。一見すると、指示寸法が明確でなく不親切なように感じられるかもしれませんが、数多あるJIS盤メーカー様が多種多様な設計思想で製作された既設VCBの盤内配置に対して、最良の更新位置を割り出すのは、なかなか骨の折れるの作業ですので、面倒と感じられることもあるかと考えますが、お付き合いください。

今回の内容は、既設VCBが、東芝のVー10で、更新するのは、東芝のV4C-Uで、更新アダプターは、KV-TMU03(KV-TNU01に追加加工でも可)として紹介していますが、東芝のV-16から、V6C-Uへの更新もほぼ近似した内容ですので、該当回が公開されるまでは、本編をご参考にして下さい。

更新の条件ですが、既設VCBを固定しているパネルの板厚は、3.2mmとして、話をすすめます。東芝様では、パネル板厚が、3.2mm以上であれば、VCBの固定をパネルのみで行ってよいとされていますので、VCBの固定は、パネル固定のみOKという条件でのご説明となります。これより薄いパネル厚(例えば2.3mm)の場合は、パネルのみでの固定は許されてはおらず、後方床面での支持も併用するよう指示されています。こうした条件での更新手法は、今回紹介するものとは異なるものとなりますので、回を変えてのご説明となります。板厚の測定は、断面が測れない場合として、超音波による測定も可能ですので、そのご紹介も行います。

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更新工事前のご説明ですが、まずは、更新する既設VCBの外形図を入手下さい。勿論、当時のカタログがあれば、いいのですが、入手不可能であれば、図3-37-1 R1に図示されている基本寸法(C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P、Q,R,S,T,U)を実物より測定して下さい。図面はあらゆる形態のVCBに対応するため、測定箇所が多く見えますが、C~Kくらいが判れば、検討は可能です。当然ながら測定時は該当設備は停電させる必要があります。この寸法がわかりませんと、更新工事の事前検討は困難です。すなわち、VCBの本体を固定する4本のボルトの中で、左上のものを基準点とし、左端までの寸法Cと、右端までの寸法Dとすれば、C+Dの値が、既設VCBの最大幅寸法となります。V-10は、30+325=355が最大幅寸法となります。また、この基点から、最大高さまでの寸法Iと、床面までの寸法Hを加えたI+Hは、既設VCBの高さ寸法となり、Vー10では、50+206=256となります。更新を検討する場合は、まずこのフレームの最大幅と高さ寸法が、更新VCBではどう変化するかを見る必要があります。図3-37-2R1には、同じ観点から更新するVCBの寸法表が掲載されており、V4C-Uについては、最大幅C+D=46.5+318.5=365>355であり、高さは、I+H=91+219=310>256であり、幅は10mm、高さは、54mm既設VCBより大きくなっていることが判ります。こうした場合は、経験的には、導体位置を合わせるよりも、床位置の高さを揃えて、本体の外形位置を合わせた方が無難ということになります。もし、既設VCBに接続されている電線が余裕を持って長目に配線されており、新しい導体位置に容易に接続が可能で、VCBの上部に余計な機器や配線ダクト類がないようであれば、外形位置が極力近くなるの位置を選択下さい。つまり、図3-37-3R1で、既設V10-Uの左上の穴を基準として、KVアダプターの固定穴への寸法は、A=82.5で、B=60を選定下さい。上部に更新を阻害する余計な機材があって、下部には全くない場合は、A=82.5とし、B=ー10くらいまで下げることも、併せて検討下さい。勿論、更に下げることも可能ですが、既設パネルに残った固定穴は隠す必要があります。既設VCBが固定されていたパネルの表面板部は他の部分と色が異なっている例が多いので、変色部をKVカバーで隠す必要もあり、むやみに下げるのはおすすめしません。(また導体の接続位置は既設より下がることになるので、電線は張り替えるしかないと考えます)

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電線に余裕がない場合は、VCB本体の左右位置を調整して、既設の導体位置に近づける必要がでてきますし、VCB本体を上方に移動して、既設の接続電線が使えるよう更新VCBの床面高さを上げてやる必要があります。勿論、既設のVCBの上部には、配線ダクト等が位置している場合が多く、位置を移動する必要が出てきますので、既設VCBの周囲がどうなっているか十分観察する必要があります。ただし、このV-10の更新工事で有利なのは、既設VCBの接続位置高さより、更新VCBの接続位置高さが高く、制御用電線端子が、上部ではなく右側面にあることであり、既設VCBの上部が大きく空いている可能性がきわめて高いことです。この場合は、Bの寸法を90より大きくとることも検討下さい。B=90は床面が既設より、31mmあがった位置として算出された寸法です。A=53.5は、導体位置を既設に合わせたものです。但し、B寸法が105mmを超えますと、変色した部分等を隠せなくなります。

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今回は、既設VCBの左右が比較的空いていて、基本形のKV-TMU03(KV-TNU01に追加加工したものも可)が使用可能の場合のご説明が基本ですが、左右にVCB以外の機材(Ex、切替SX、表示ランプ、配線ダクト等)があって、互換アダプター、KVーTMU03が当たってしまう場合については、幅の狭いKV-TMQ01(KV-TNQ01追加加工)の採用もご検討下さい。但し、幅狭形では、左上の固定穴の位置がKV-TMU03とは異なりますので、A,B寸法の補正が必要であり、またアダプターの固定穴が上下につきますので、VCB上部に配置している可能性のある制御配線等と当接することがないかの確認と、アダプターの幅が狭いので、変色部や既設固定穴を隠せないケースが出てきますので、作業開始前に十分にご注意下さい。

今回は、既設VCBが、パネルの板厚が、3.2mmでありますのでVCBは、パネルのみで固定可能という条件でのご説明でしたが、中には、パネルの板厚が、2.3mmで、後方の床面での支持が必要な場合もありますので、この場合についてのベースアダプターも併用した更新工事については、別の回で改めてご紹介します。

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