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JIS盤用VCBの保守と更新 (第39回R2 富士電機 HA08B-HRW3-N から 富士電機 HA08AB-H への更新 パネル板厚 3.2mmの場合)

VCBの更新条件ですが、既設VCBを固定しているパネルの板厚は3.2mmとし、更新後も同じパネルを使用する条件で、説明します。富士電機様では、パネル板厚が、3.2mm以上であれば、VCBの固定をパネルのみで行ってよいとされていますので、VCBの支持はパネル固定のみで行い、後方床面での支持は不要という条件でのご説明となります。3.2mmより薄いパネル厚(例えば2.3mm)の場合は、パネルのみでの固定支持は許されてはおらず、後方床面での支持も併用するよう指導されていますので、こうした条件での更新工事は、今回とは異なるものとなりますので、YouTube動画も含め、説明の回を変えてのご説明となります。板厚の測定は、断面が見えないために測れない場合が多いですが、超音波測定器による判断が可能であり、その詳しい方法も2.3mm板厚で、後方床面支持を必要する回で詳しくご紹介します。

尚、主回路導体接続位置の左右方向の中心(本説明は、添付図に合わせてVCBを正面方向から見た時の左右位置で説明します。既設VCBの上下左右に障害物の有無を目視調査する場合は、当然、盤の裏側から見ていますので、左右逆になりますが、あくまで説明は正面から見た方向で統一して、ご説明しますので注意下さい)ですが、「N」寸法は、フレーム巾の半分(C+D)/2と、「E」寸法からの算出でも得られます。寸法図は、主回路導体の中心線が、フレームの中心線より左側として書いていますので、この場合は、数字はプラスで表し、反対に右側に行く場合は、マイナス表記になりますので、ご注意下さい。また、更新後に、既設VCBの固定に使われた穴は、全てKVアダプターで、塞ぐ必要があることから、一番上の貫通穴までの左上固定部からの高さ「O」と、一番下の貫通穴までの長さ「P」についても、追加します。また、同じく一番左端の貫通穴までの長さを「Q」とし、一番右端の貫通穴までを「R」とします。

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更新工事前のご説明ですが、まずは更新される既設VCBと、更新用VCBの外形図面を入手下さい。勿論、当時のメーカー様が公式に作成した図面があれば最適ですが、入手困難であれば図3-39-1R2に図示されている基本寸法「C」「D」「E」「F」「G」「H」「I」「J」「K」「L」「M」「N」「O」「P」を実物より測定して下さい。(勿論、架電中の調査は危険であり、寸法調査する場合には停電状態で実施する必要があります)今回は既設VCBの図面を用意していますので必要ありません。この寸法がわかりませんと、更新工事の事前検討はできません。すなわち、VCBの表面板を固定する4本のボルトの中でも左上のものを基準点として、左端までの寸法「C」と、右端までの寸法「D」となり、C+Dの値が、既設VCBの最大幅寸法となります。既設HA08B-HRW3-Nは45+296=341mmが最大幅寸法となります。
また、この基点から、最大高さまでの寸法「I」と、床面までの寸法「H」を加えたI+Hは、VCBの高さ寸法となり、既設HA08B-HRW3ーNでは、10.5+202.5=212.5mmとなります。更新を検討する場合は、まずこのフレームの最大幅と高さ寸法が、更新VCBではどう変化するかを見る必要があります。

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図3-39-2R2には、同じ観点からの更新VCBのHA08AB-Hの寸法表が掲載されております。HA08AB-Hについては、最大幅C+D=45+302=347mm>341mmであり、幅は6mm(347-341)広く、高さは、I+H=27+237=264mm>212.5mmであり、既設VCBより51.5mm(364-212.5)高くなっていることが判ります。既設VCBの上部51.5mm以内に何か動かせない機器等がありますと、床位置を合致させた更新は不可能であると判ります。外形寸法的に、幅も高さも既設VCBより更新VCBが大きいことから、基本的な更新VCBの中心位置は、既設VCBの中心位置に合わせるのが無難と考えますが、この事例では、加えて導体接続の高さ位置が、低く不利になっているという大きな問題があり、更新VCBの位置は、上方向に移動する方法が必要で、既設VCBの上部が大きく空いているのが条件と思われます。

電線が接続されるG寸法の高さですが、既設VCB HA08B-HRW3ーNの「G]の高さ259.5mmは、新更新用VCB HA08AB-Hの234mmより25.5mm高くなっていますので、電線の接続高さの位置でいえば、25.5mm低い分だけ、既設接続位置から下がりますので、既設電線の接続が困難という問題があることが判ります。ただ、この組み合わせの更新工事で有利な点は、この既設VCBの制御端子台等は、側面に設けられ、制御線が上部に配線されていないため、上部の空間が大きく空いている可能性が高いことです。
一般的に、S相の導体中心位置のずれですが、VCBフレームの中心からの距離「N」で、比較した方が理解しやすいのです。基本的に、既設VCBフレームの中心線と、更新VCBのフレームの中心を合わせた更新位置を考える必要が生じ、その差がゼロとなる位置が、導体位置を近づけたた位置となります。単純に中心位置を合わせた場合は、「N」の差が横方向の差となり、62-41=21mmですから、更新するVCBの位置を正面から見て左に21mm移動するのが導体位置を合わせる上では、最善であり、取付高さも25.5mm以上あげてやることが電線の接続には有利であることが判ります。

電線接続位置の奥行き方向の距離「F」について比較すれが、308-307=1mmであり、ほとんど差がないことが判ります。

もし、既設VCBに接続されている電線が余裕を持って長く配線されており、新しい導体位置に容易に接続配線が可能で、既設VCBの上部に余計な機器や配線ダクト類がないようであれば、外形位置が極力近くなる位置、つまり既設VCBフレームの中心と更新VCBのフレームの中心が合致する位置となります。つまり、図3-39-3R2で、既設HA08B-HRW3の左上の穴を基準として、KVアダプターの固定穴への寸法は、A=105mmで、B=63mmの選定となります。上部が大きく空いている場合は、既設の下側に残る固定穴をKVアダプターで隠せる条件として、最大51mm程度までは、上に上げることが可能で、A=105~126mmで、B=63~114mmとなり、114mmの場合は、電線の接続位置は、25.5mm(51-25.5)上方向に移動しますので、接続が可能となる率が高いと言えますので、YOUTUBEでの実演は、A=126mmで、B=114mmのケースについて、ご紹介します。

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上部に余分な、機材があって、更新VCBが移動できるスペースがなく、逆に下部が大きく広い場合は、A=105~126mmとし、B=63~36mm(63-27=36)とする位置決定も、これで、電線が届くようならOKですが実現できる可能性はかなり低いと考えます。

以上、説明した条件内であれば、既設電線を利用した更新が可能となる可能性が高いですが、不可能であれば、費用はかかりますが、電線は張り替える必要が生じる場合もあると考え、交換する電線を準備して下さい。上部の断路器からVCBに流れ込んだ汚水が原因となる絶縁劣化での更新工事であれば、同じく絶縁劣化の可能性の残る主回路電線を新しくする意味は十分にあります。

今回は、既設VCBの左右が比較的空いていて、富士電機様用として、加工不要で使えるKV-TNU01(KV-FSU21)が使用可能の場合のご説明が基本ですが、左右にVCB以外の機器(Ex.電力量計、切替SW,表示ランプ)等があって、KVーTNU01が当たってしまう場合については、幅の狭いKV-TNQ01 の採用もご検討下さい。但し、幅狭形では、アダプターの固定穴が上下につきますので、VCB上部に配置している可能性のある制御配線等と当接することがないかを十分ご注意下さい。KV-TNU01と、KV-TNQ01は、固定穴の位置が異なりますので、A,B寸法は補正する必要があります。KV-TNQ01は、高さ寸法が、KV-TMU01より大きいので、B寸法の制限も、10mm程度緩和され、Bは最大124mmまで可能となります。

今回は、既設VCBが、パネルの板厚が、3.2mmでありますのでVCBは、パネルのみで固定可能という条件でのご説明でしたが、中には、パネルの板厚が、2.3mmで、後方の床面での支持が必要な場合もあります。この場合についてのベースアダプターも併用した更新工事については、次回改めてご紹介します。

次回、第40回の配信は、富士電機様の既設VCBHA08B-HRW3ーNが、2.3mm厚さのパネルと後方床面で支持されている場合について、ベースアダプターを使用して、現行のHA08AB-Hに更新するケースについて、ご紹介する予定でおります。

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