JIS盤用VCBの保守と更新 (第17回:真空バルブの清掃)
前回、VCBを下から見た状況を御覧にいれましたので、内側の真空バルブを清掃する場合の注意について、ご説明します。真空バルブも含めて、VCBの内側を清掃できるチャンスはあまりありませんので、できれば取り付け状態のままの下から見上げた苦しい体勢で清掃するのではなく、盤外に運び出して、作業しやすい環境で完全な清掃をされることをお勧めします。
円筒形になっている真空バルブの表面を清掃後に拭き上げる場合は、縦方向ではなく円周方向に拭いて仕上げるのが正解です。電極間の絶縁電圧が、かかる方向と垂直方向に拭き上げた方が結果的に高い絶縁抵抗が得られます。見える側の面だけでなく、見えない反対側の側面も清掃する必要があります。
以前説明しましたように、絶縁劣化事故は、絶縁物表面にできた炭化物が、放電を繰り返すことで、トラッキングとして伸びていって、短絡状態になります。従って各VCBメーカ様は特に相間の沿面距離(導体間で、絶縁物の表面を辿った最短距離)を少しでも長くすることで、絶縁劣化事故が起きにくいように設計しています。清掃する場合も特に電圧のかかる一番近い絶縁物の表面を重点的に観察し、念入りに清掃して下さい。
以前紹介しましたトラッキングについて、その発生メカニズムがどうなっているか、ご紹介したいと考えます。絶縁物の表面をつぶさに観察することによって、トラッキングは発見されます。上からの汚損水が主回路導体を辿って侵入した場合に、その汚損水はどこに導かれ、どこに溜まるかを推理することにより、異常が発生しそうなところを推定し清掃するのも一つの方法です。
絶縁抵抗を回復させるための薬剤も発売されていますが、正直言ってこのトラッキングが発生してしまいますと、完全な回復は不可能です。炭化した絶縁物を削り取るしか、絶縁力を回復する方法はなく、削れば、本体の機械的強度は低下しますので、VCBの更新までのつなぎ的対策にしかなりません。
トラッキングが発生するまでのプロセスですが、まず絶縁物の表面に塵埃(ほこり)が付着します。次に、盤内の空気の湿度や結露にによって、塵埃が濡れて、絶縁抵抗が大きく減少し、部分放電が発生するようになります。放電により、水分は一時的に乾かされれますが、また水分が付着することで、部分放電することが繰り返される内に、絶縁物の表面の炭化が始まってしまいます。これが、トラッキングとなり、地絡事故や相間短絡事故が発生してしまうわけで、絶縁抵抗が減少した時点で、清掃を完全に行うしか防ぐ方法はありません。
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