JIS盤用VCBの保守と更新（第29回:富士電機VCBの構成）

富士のVCBの構成ですが、基本的に正面側機構部と、高圧充電部の関係は同じです。背部まで伸びて、３本の真空バルブに個々に接続された主軸の動きにより、３本の真空バルブの可動電極が動いて、３相同時投入と同時遮断となります。但し、以前ご紹介しましたように、富士電機のVCBは、床板にカバーがありますので、カバーを外しませんと、真空バルブは見えません。床カバーは、２本のM８ボルトで固定されていますので、このボルトを外すことで、真空バルブが現れます。以前、ご紹介しました絶縁劣化対策で、真空バルブの清掃を行う場合は、このM8ボルト２本を外してお願いします。

富士電機のVCBの機構部の構成ですが、基本的には先に説明した、日立、東芝と同じものですが、標準装備されている一人作業フックに注意する必要があります。現行品の機種をカタログにある標準穴明け図に基づいて、製作されたパネルに取り付いている場合の保守作業は問題ないのですが、一度更新されているVCBの場合は、注意が必要です。旧いタイプのVCB取付け穴にそのまま開口工事なしで取りつけられたものは、VCBの下部のフックが外されているだけで、パネルには開口部がありませんので、VCBへ注油しようとすると、VCBを完全に盤から外して取り出して行うしかありませんので、停電時間が余計にかかることになります。現行のVCBは、下図にありますように、大きく開口した角穴の上端と下端に上下２本ずつつけられたフックを、上下にスライドさせることで、仮取付けが可能です。この角穴の上下の寸法が合いませんと、上下のフックが正しく角穴にはいらなかったり、入っても、引っかからず、本体が落下することになりますので注意が必要です。

また、標準穴あけ図は、一人作業用として、＋－０．５ｍｍの精度を要求しており、これは現地作業では困難な加工精度です。あるいは、この精度は最初から無視して、４本の固定穴のみで、取りつけられている可能性もあり、一人作業フックが機能しませんので、４本の固定ボルトを外しますと、落下してけがをする可能性があります。機会を見て、KVアダプターなどの互換板方式にされて、定期検査時の注油等のメンテナンスが容易な形態に変更されることを推奨します。床固定を併用されていたものが、取り外されたままになっている場合もあり、一度更新を経験しているVCBを担当される場合は特に注意が必要です。第三章の「VCB更新虎の巻」で、詳しく説明します。

富士電機のVCBに使用するオイル類です。次回注油の実演」を行うVCBは、現行品の手動形ですので、左側のフッソオイル１０５のみ使用します。中央の黄色のペーストスプレーは、２０１３年以前の手動形VCB用であり、現行品に使ってはいけません。右側のスズクロールNo.2は、引出形VCBの摺動電極用で、今回のVCBには使えません。ともかくメンテナンスされるVCBに付属されている取り使い説明書に従って、使うオイル類を選定する必要があります。

ここでは、詳しく説明しませんが、富士電機が製造するJIS盤用VCBでは、他の３社同様の手動操作方式のVCB以外に、ＡＵＴＯ―Ｖといって、ＶＣＢ自体にＣＴとリレーを組み込んだ方式のシリーズが販売されています。既設がＡＵＴＯ－Ｖの場合は、更新は、ＡＵＴＯ―Ｖしか不可能ですので、新旧の形式を十分に確認下さい。

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